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東ティモールで医療とこどもへの栄養支援!神尾美穂さん。

東ティモール民主共和国をご存知でしょうか?

インドネシア共和国の東に位置する、岩手県と同じくらいの大きさの国です。450年間、ポルトガルやインドネシアの支配下で苦しみましたが、2002年に独立を果たした「アジアで一番若い国」です。

私(神尾美穂/13班)が勤務している蔵坪の満尾医院眼科は、2018年に東ティモールを支援する「NPO法人NAROMAN(ナロマン)」を設立しました。「眼医者さんと東ティモールにどんな関係があるの?」と不思議に思われるかもしれません。満尾医院の坂西京子院長が、高校時代のクラスメイトの東ティモール独立前からの人材育成や国づくりへの貢献を知り、「私にできることは何か」と動き出したことで取り組みが始まりました。「自分のため」「家族のため」に働いて来た私ですが、院長の理念と行動力に感銘を受けてから「人のため」に働ける幸せを知り、2019年にNAROMANの活動に加わりました。 (神尾さん制作の東ティモール紹介動画/約9分 ↓)

NAROMANの活動内容をご紹介します!

NAROMAN(ナロマン)とは、現地のテトゥン語で「輝き」の意味。東ティモールにおける

1     眼科領域における医療支援

2     低栄養のこどもたちへの栄養支援

が活動の2本柱です。

 

  「医療支援」として、これまでに6回、延べ10名の医師を派遣。600名以上への無料眼科診療と、3名への眼科手術を行いました。満尾眼科の患者さま等から寄贈いただいた老眼鏡も提供し、とても喜ばれています。

現地へ行って医療を行うことはもちろん大切ですが、医療面での自立を考えると、未来の東ティモールの医療を担う現地人材を育成しなくてはなりません。そこで、貧しいために医師になる夢を諦めていた青年を支援しました。無事にインドネシアの国立大学医学部を卒業し、現在は医師として活躍しています。さらに、医療や教育を志す女子学生に寮を提供しています。2019年には眼科手術用顕微鏡を国立病院へ寄贈し、今では年間約1,000例もの手術に活用され、東ティモールの人達の「見える」喜びの一助となっています。

 

もう1つの活動の柱である「栄養支援」についてです。

東ティモールでは、1,000人当たりの5歳児死亡率は47人。日本では2人なのに、です。

就学前のこども(0歳〜4歳)の発育阻害率は49%にのぼり、約半数が慢性的な栄養不良状態にあります(『UNICEF 世界子供白書2023年版』)脳の8割近くは3歳までに発達を遂げる、と言われています。その重要な時期に栄養不良に陥ると、低身長など身体の発達だけでなく、認知能力面にも影響を与え、その後の人生における学びや雇用にも大きく影響します。こどもの栄養不良は、国の未来を左右する大きな課題です。

そこで、私達は栄養不良のこどもを持つ親子を集め、身体測定、衛生や栄養について学び(インプット)、調理実習(アウトプット)し、楽しく食事をしたうえで、個別指導を行い、修了書を授与するといった1週間にわたる活動を続けています。2019年から20238月まで、のべ保護者1,151名・こども1,786名に栄養指導を行いました。 (神尾さん制作の活動紹介動画/約8分 ↓)

時代に合った方法で、正しい情報を地道に発信し続ける!

 私は今までは日本から活動を支えてきましたが、高校卒業を機に活動に参画した娘とともに、20238月に東ティモールへ初めて渡りました。国立病院やリハビリテーションセンター・保健省を訪ねる一方で、現地の家庭に伺って実際の暮らしも体感しました。UNICEFや各国支援のもとで設備は整いつつあるのですが、一番の課題は人々の意識をどうやったら変えられるかだ、と感じました。医療サービスが無料で受けられるのに、利用者はそれほど多くありません。交通手段の欠如等の物理的な理由もありますが、それ以上に、治療や訓練に対する認識が高くないのです。

 

例えば、こどもの発語が遅くても「物静かだ」「いずれ話すだろう」、視力が低下しても「こんなものだ」と病院やリハビリセンターへ行くという行動につながりません。それどころか「病気になったり心身に障がいをあるのは、行いが悪いからだ」という迷信を本気で信じている人が少なからずいるようです。妊娠・出産に際しても大きな持病がない限り、通院するという考えはありません。生涯に6~7人を出産するといった母体への負担が大きい状況も続いています。正しい情報を、適切な時期に「知ること」の大切さを痛感しました。

 

スマホ1つで、簡単に情報が入手できる時代です。しかも東ティモールは平均年齢が20.8歳(World Bank 2020)! 私達の活動も時代に合わせた方法で、正しい情報を地道に発信し続ければ、きっと意識も変えていけると期待しています。

「貧しい」=「かわいそう」ではない。家族が協力し逞しく生きる。

 東ティモールの人々と触れあい、暮らしぶりを目の当たりにし、私自身の意識も大きく変わりました。日本に比べると生活は貧しいでしょう。活動の協力スタッフでも「13人家族が15ドルで生活している」と話し、多くの人がわずかのお金で暮らしています。しかし、街では物乞いや浮浪者をほとんど見かけず、お金や物をせがむストリートチルドレンには1人も出くわしませんでした。おそらく、家族の絆が強く、中には働けない人がいても、働ける人が稼いだお金を家族みんなで分け合い、支え合っているから。それが「家族」だからです。

 「貧しい」=「かわいそう」「不幸」と思っていましたが、家族が協力しながら逞しく生きる姿に触れることで、日本人的感覚では「不自由」な生活に見えても決して「不幸」ではない、「日本人の常識」というフィルターをかけて見てはいけない、現地の方々が本当に望む支援・望む姿は何だろう、と考えさせられました。

眼を輝かせて将来の夢を語る子どもたちの顔が浮かびます。そう、未来を担うこの子達が、生活環境のために夢を諦めることのない社会を作りたい。私はこどもたちへの「教育」を通じて、「知っていれば気づけた、防げた」をなくすためのお手伝いをしたいと強く願うようになりました。

飛行機から見える景色には、国を隔てる線はありません。言い古された表現ですが、改めて実感します。どちらが正しいか、ではなく、お互いの違いを認め同じ地球に住む「家族」として助け、助けられる対等なパートナーとなれるように、これからも活動を続けて行きたいと思います。

NAROMANの詳しい活動内容は以下のホームページに紹介しています。ぜひご覧になってください。

特定非営利活動法人NAROMAN

 

また、NAROMANでは使わなくなった老眼鏡等のご寄付を広くお願いしています。ご自宅に眠っている眼鏡を満尾眼科までお持ちください。大切に使わせていただきます!

今後ともご支援いただけますようにお願いいたします。