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YABEに暮らした人たち その3 御囃子(おはやし)を始めた人 小泉豊(1946~ )

 ようやく今年、各地でお祭りも再開され、谷矢部東町内会でも918日(日)、新型コロナウイルス感染症予防の対策を万全にしつつ縮小開催に向けての検討を進めています。例年は近隣六町内会(蔵坪、柳作、竹の下、谷矢部西、谷矢部東、ファミール戸塚)で一斉に行われ、子供から大人まで「御神輿(おみこし)」が練り歩きますが、今年は六町内による神輿(みこし)交流は中止し、街山(つじやま)八幡社での安全祈願のための神輿御霊入れ・町内のみ巡行の可能性を検討しています。

そして祭礼といえば、御囃子(おはやし)! 谷矢部東御囃子は横浜市より「無形民俗文化財保護団体」に認定されるほどの実績を誇っています。

 

今回はこの御囃子を始めた人、谷矢部東御囃子連中の顧問である小泉豊さん(13班)に由来をおたずねしました。

新しい御神輿(おみこし)に、御囃子(おはやし)も!

御囃子の始まるきっかけは、今から40年以上前の1981(昭和56)年、谷矢部東として御神輿を新調したことにさかのぼります。

汲沢にある五(ごりょう神社の神輿が白木で造られていて、見た目も良く軽くて谷矢部東にぴったりのではないかと話し合い、埼玉県の鯨さんに制作してもらいました。翌年の1982(昭和57)年には金原真人さん(13班)、山下賀則さん(故人・坂本町内会)と3人で、山下さんの軽トラックで引き取りに行ったことを覚えています。制作には当時の金額で160万円ほどかかりましたが、町内会の皆さんからの寄付で立派なお神輿が完成して、とても嬉しかったですね!」

と、当時を振り返って小泉さんは話してくれました。

谷矢部東町内会の御神輿(1982年制作)
谷矢部東町内会の御神輿(1982年制作)
町内の御神輿の発想の元になった五霊神社(汲沢)の御神輿(鈴木正雄さん/12班A 撮影)
町内の御神輿の発想の元になった五霊神社(汲沢)の御神輿(鈴木正雄さん/12班A 撮影)
街山八幡社での神輿御霊入れ(2019/令和元年9月)
街山八幡社での神輿御霊入れ(2019/令和元年9月)

 しかし「御神輿だけでは物足りない、御囃子もつきものだろう」と考えた小泉さんは1982(昭和57)年から谷矢部囃子連から指導を受けながら、まずは自分自身で練習を開始。当時の代表だった河原幸雄さん(故人)にお願いし、谷矢部西の「谷矢部囃子連中」の練習に参加させてもらいました。その一方、谷矢部東の他、柳作や竹下町内会にも御囃子への参加を募った結果、谷矢部東町内から男子6名・女子4名のこども達が集まり、谷矢部東の御囃子連中が発足したそうです。

 

 

谷矢部御囃子連中のご指導と町内の力で、無形民俗文化財保護団体に

神輿巡行の際の御囃子(2019/令和元年9月)
神輿巡行の際の御囃子(2019/令和元年9月)

翌年1983(昭和58)年4月からは、谷矢部西町内から河原幸雄さんをはじめ小糸文夫さん、鈴木義一さん等、谷矢部御囃子連中の4名の方が毎週2回も街山八幡社まで出向き、発足したばかりの谷矢部東への指導にあたってくださいました。

 この年9月、祭礼に初めてお披露目できた時のことを振り返り、

「毎週2回も八幡社まで来てご指導いただいた谷矢部御囃子連中の皆さんは本当に大変だったと思います。この御囃子が谷矢部東の大きな財産になったことに深く感謝しています。

また当時、谷矢部東町内会第10代会長の本多栄見さん(故人・5B)が惜しみなく協力してくださったからこそ、現在までつないで来られたのだと思います」

と語っておられました。1987(昭和62)年には、それまで他の町内から借りていた太鼓や獅子頭も揃えることができたそうです。また、瀬戸ミサエさん(7班)の駐車場には祭礼時に御囃子連中が演奏する舞台用の柱穴まで作っていただき、今も見ることができます。

その後、1989(平成元)年の夏にはみなとみらい地区で開催された横浜博覧会(YES’892回、翌年には矢部小学校の運動会や戸塚区民まつりで演奏しました。また1994(平成6)年にはアジアで初めて開催された、横浜での国際エイズ会議にも招待を受け参加。これらの活動が認められて、地域に結びつきのある民俗芸能を継承し後継者の育成等の保存継承に熱意のある団体として、1987年(昭和62年)から横浜市より「無形民俗文化財保護団体」に認定されています。

 

 現在の会員数は22名(大人15名、子供17名)。新型コロナウイルスの感染が拡大する前までは、4月~11月の間に月219時~21時(子ども20時まで)まで、青少年会館で練習を続け、祭礼での演奏や、「おけど」という携帯型の太鼓を持っての正月寿獅子舞や地域イベントでの演奏等、幅広い活動を行っています。

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秋の芸術祭(2021年11月)での御囃子(鈴木正雄さん/12班A 撮影)
ぜひクリックしてご覧ください!
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MP4動画/オーディオファイル 9.4 MB

御囃子はそれぞれの地域によってビミョーに異なる…

正月に家々を回る寿獅子舞(2019/平成31年1月)
正月に家々を回る寿獅子舞(2019/平成31年1月)

 さて、谷矢部東囃子連中はどのような編成になっているのでしょうか。

現在、谷矢部東御囃子連中の主宰者である小泉淳さん(13班)にお尋ねしました。

「御囃子連中は3つに役割分担しています。太鼓の部、篠笛(しのぶえ)の部、踊りの部の3つで、太鼓の部から習い始めます。太鼓は長胴太鼓(ながどうだいこ)、締太鼓、当たり鉦(あたりがね/よすけ)を担当しますが、テンポを作るのでとても大切なパートです。太鼓を習得した後に笛や踊りも担当するようになりますが、笛はとても難しいですね。音が出るようになるまでに練習が必要。でもいったん吹けるようになると花形ですので楽しいと思います。踊りはひょっとこ、おかめ、笑いといったお面をつけて踊りますが、ずーっとかがんだ姿勢になりますから体力勝負。現在、谷矢部東囃子連中は、場面に合わせて多くの曲を演奏して踊れます」

御囃子は日本全国に様々な流派があり、戸塚近辺でもいくつかの御囃子連中が活動していますが、谷矢部囃子はどの流れをくむものでしょうか。

「各地で活動している御囃子は元々の流派があるのかもしれませんが、その時その時に演奏する人や時代によって少しずつ変化して行っていると思います。楽譜等の書かれたものは一切なく、すべて自分達の耳と身体で覚えて行くものだからです。

谷矢部囃子は、ツケテンテン、テンテンコ、という入り方をするのが特徴的だと思います。他の囃子とじっくり聴き比べると違いがわかりますよ」とは、小泉豊さん。

囃子の「はやす」とは「神々の霊魂を分ける・増やす」といった意味で災いを防ぐと考えるという説もあり、専属の演奏家ではなく各地域の一般の氏子達が練習して祭りや正月に演奏してきた音楽です。地域に根付いて伝承されてきた特徴がありますから、少しずつ違うというのも納得ですね。

獅子頭(メス)/権九郎型
獅子頭(メス)/権九郎型
獅子頭(オス)/宇津型
獅子頭(オス)/宇津型
お面(左からひょっとこ、笑い)
お面(左からひょっとこ、笑い)
太鼓(左から締太鼓、長胴太鼓)
太鼓(左から締太鼓、長胴太鼓)

今年の3年ぶりの祭礼には、谷矢部東御囃子連中の皆さまもコロナ対策を万全にしながら参加してくださるとのことです。今からでも遅くない!参加希望の方は、主宰者の小泉淳さん(℡ 045-861-1453)までご連絡ください。

また、821日(日)午後130分~3時には、青少年会館で谷矢部東御囃子のゆかりを小泉豊さんに話していただき、実際の楽器や踊りのお面、御神輿にも触れる「やとやべひがし 夏のお話会」を開催する予定です。詳細は回覧やHP、以下に添付の案内書等でご覧のうえ、ぜひお申込みを!

 

谷矢部東御囃子連中の皆さんと小泉豊さん(上段右端)(2018/平成30年1月)
谷矢部東御囃子連中の皆さんと小泉豊さん(上段右端)(2018/平成30年1月)
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夏のお話会の詳細案内書&申込書
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